2008年4月27日付  産経新聞






熱いゾ 東京歌劇団

「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 本格的なオペラ公演
(産経新聞・ MOSTLY CLASSIC )




 バス歌手の岸本力、バリトン歌手の田辺とおる、指揮の珠川秀夫、演出の大島尚志の4人が中心になって発足した東京歌劇団。
5月4、5日、ショスタコービチのオペラ「ムツェンスク郡のマクベス夫人」での旗揚げ公演を目前に控え、熱気溢れるリハーサルが続いている。

 日本人によるプロダクションとしては舞台上演されたことのない「ムツェンスク―」を公演したいと、田辺がロシア声楽曲の第一人者である
岸本に話を持ちかけたのが始まりだ。

 「旧ソ連を代表する作曲家のこの作品は、海外の音楽祭や名門歌劇場では既にオペラハウスの重要なレパートリーとして定着しています。
それが日本で上演されないのは、あまりにももったいないこと」と、海外のオペラハウスでの経験も長い田辺は語る。一方の岸本は「長くロシアの
歌を歌い続けてきた私にとって、この作品は悲願でした」と熱い心情を明かす。

 そのプロダクションの運営面を東京国際芸術協会が引き受け、今後の展開も視野に入れて、団体名を「東京歌劇団」として出発することになった。

 「ムツェンスク―」は、ショスタコービチ20代半ば頃の作品。地方の商家に嫁いだカテリーナと、その家の使用人セルゲイとの不倫の果てに起こる
殺人の行く末を描いており、当初はスターリン批判、過激な暴力と性描写がクローズアップされた問題作だ。

 「不倫、殺人、裏切りが続発するこのオペラは、テレビの2時間ドラマにも通じるもの。必ず、観客の皆さんに楽しんでいただけるはず」と田辺。
指揮の珠川も「このオペラは、我々の時代に近い筋書きが備わっています。それに音楽がぴたりと寄り添っているので、難しいと思いがちな
ショスタコービチの音楽も、聴きやすく感じられるのでしょう」と語る。

 出演は、4日が菊地美奈、羽山晃生、田辺とおる、5日が黒木真弓、角田和弘、岸本力。
公演は東京・荒川区のサンパール荒川。問い合わせは東京国際芸術協会 03-3809-9712。(山口克志)